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Robert un Berge (中編)

Joeが企画して私を招待してくれた日仏学館のクリスマス・パーティー。Joeとステイジで踊りまくって皆から拍手をもらい、急速に親しくなったあの同じパーティーで、実はRobertとも出会ったのだった。
Robertは「2メートル」というニックネイムのベルギー人の大男で手も足も顔も何もかも大きかった。金髪で奥まった目には哀愁と誠実さと傷つきやすさがミックスされていた。外では黒マントを着ている。
Robertの黒マントの中に入って身を寄せると、小さな私は完全にRobertの一部になってしまう。Robertのマントの中にいると、ああ、もう東京に、Gに会いに行かなくてもいいかもしれないと、思えたのだった。
Gに会いに行くのは傷つくためだ。傷ついてGに会いたくなくなるために何度も上京していた。それが無駄だと知ると、今度はGを傷つけるためにGに会いに行くようになった。Gに完全に嫌われるために。

Robertをじっと見た。何の違和感も無かった。強烈な磁力だけを感じ
た。Robertとなら同じ空気が吸える。それにGから遠ざかることもできる。大阪や京都で何度もRobertと会った。
ある日Robertに上京する用事ができた。
RobertにはGがどう見えるのだろう、GにはRobertがどう見えるのだろう。私は「友人に会ってきてほしい」と言ってRobertにGの住所を渡した。

Robertは上高田のGの家まで出向いてGに会ってきてくれた。
「どう思った?」と聞くと、Robertは顔をしかめて首を横に振った。
何か嫌な思いをしたのだろう。
私は二人の出会いにどんな結果を望んでいたのだろうか?
ベルギー人のRobertの部屋には大きなルネ・マグリットの画集があった。画家のGとマグリットの話でもして友達になってくれることを、ひょっとして望んでいたのだろうか。失敗だった。
単にGを驚かせただけだったのかもしれない。

次にGに会った時、さりげなく聞いてみた。
「私の友達が会いに来なかった?」
Gribouille「そう。来たよ。道に迷って電話してきた。お酒屋さんの角を曲がって、って説明したら『お魚屋さんの角を曲がったけれど、またわからなくなった』って電話があって」
これがGの言ったことのすべてだった。
Gはやって来たRobertを一目見て、私の心身にどんな変化が起ころうとしているか、おそらく瞬時にすべてを直感したのだと思う。

////////////////
クリスマス・パーティーから一年すこし後(?)Joeが日仏学館の留学生試験に合格して、それから家の援助も獲得して、半年ほどヨーロッパ遊学をすることになった。
早速第一報の手紙が来た。

「現地に来て学生会館に落ち着きました。まず1,2ヶ月ほどはみっちり勉強です。こちらに来る飛行機の中で思わぬ人と隣席になり吃驚しました。誰だと思う?休暇で実家に帰るRobertです。この先僕に何が待っているのか。一週間後に第二便を出します。楽しみにしていてね。
Je pense a toi. Ton Joe」
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Robert un Berge (前編)

「この間電話で僕が『慙愧してよ』って言ったら、Marieは間違えて『わかったわ、懺悔するわ』って言ったでしょ。罪の意識を認めてるんだから、もう」
珍しくJoeが怒って嫌味を言っている。
Joeとお昼ごろに会う約束をして、結局夕方の4時ごろ「ごめんなさい。今日は行けない」ってキャンセルの電話をしたのだから、人間として慙愧して当然だ。けれど当時の私は、約束の時間にまともに行ったことは一度もなく3,4時間の遅刻は当たり前、直前のドタキャンも平気という脱社会娘だった。何人の人をカンカンに怒らせただろうか。Joeは私のそういうところをまだ知らなかったのだ。
「僕はね、Marieから電話がかかってくると思って、電話のある1階に降りて、することがないからずっと靴を磨いてたんだよ。おかげでね、靴がピカピカになったよ」
Joeの強烈な嫌味はこの時しか聞いていない。少しは私自身反省して変わっていったのだろうか?
私はJoeと会う約束をしていながら、京都まで行って、他でもないRobertと会っていたのだ。
Joe「あの日ね、Marieを午前11時頃京都の市電で見かけた人がいるんだよ。しかもRobertと一緒だったって」
Marie「そ、そんな筈はないわ。ひ、人違いよ、クックックッ」
Joe「あっ、笑ってる。Marieはわかりやすいんだよ。ウソを言う時、必ずそうして笑うんだから」
Marie「クックックッ」(実はもう笑って誤魔化すしかない!!)
Joe「電話してきた時、今まだ自宅にいるって言ってたけど、お昼に百万遍にいて、一旦大阪の自宅に帰って、また夕方京都に来たのかい。今度は四条河原町だよ。MarieとRobertに会ったって人がいるんだよ」
Marie「だ、だ、誰なの?クックックックッ。その目の悪い人は,誰なの?クックックックッ」
////////////

Joe「Marie、この前Robertの家から二人して帰る時『今日は帰るわね』って言ってたでしょ。今日は、という他と識別する助詞を使って言うってことは、帰らない日があったって言う事だよ。Marieは少なくとも一回はRobertの所に泊まっている」
Marie「そ、そんな。考えすぎよ。今日は帰るわね、の中に省略があるのよ。今日はこのままJoeと一緒に、って言う意味よ。Joe、そんなくだらないことに頭を使ってはもったいないわよ。クックックックッ」

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