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play the guitar

生きるためだけに全力を費やしていた時代が長い。文字通り呼吸困難に襲われ、溺れかけた金魚のように口をパクパクと酸素を吸うためだけに全体力を消耗する。
養護学校から”脱走”したものの、普通校への通学が急にできる様になったわけではない。
その頃の慰めは以前大沢さんに買ってもらったguitarだった。曲が弾けるわけではない。元気な時に持って振り回すだけだ。時々はポロンポロンと弾いて作曲もしたけれど。

高校生になって芸術の選択は音楽をとった。何か楽器を決めなければならない。ギターしかないので、ギターにした。
まだ学校にもクラスメイトにも慣れていない頃だった。病み上がりで登校すると、青梅さんと言う人が「今度の音楽は楽器のテストよ」と教えてくれた。「テストって?」「前回練習した曲を一人一人別々に弾くの。Bruxellesさんはギターでしょう」「どんな曲?」「心配しなくてもコードを弾けばいいのよ」「コードなんて知らないし...」「じゃ私が教えてあげる」

青梅さんと言葉を交わしたのはその時が初めて。しかも4日後のテストのために「家においで」と誘ってくれた。
阿部野橋まで出てそこから路面電車に乗る。まだ新しい家で家人は誰もいないようだった。上がる前に足を濡らしたタオルで拭くように言われた。向かい合って椅子に座る。彼女がするとおりに真似た。一時間ぐらい練習して終わり。
「こんなのでいいの?」「それを先生のピアノに合わせて弾けばいい」

昼食時にT坊に調弦してもらった。午後の最初が音楽の実技テスト。
「さあ、どういう順番にしよう。希望者から手を挙げて」
待ってドキドキするのがイヤだったので真っ先に手を挙げた。「ハーイ」
何も考えずに青梅さんに教えてもらったそのままに弾く。
終わってやれやれと思っていると、教師が言った。
「真っ先に手を挙げるだけあって、なかなか上手だ」
ビックリした。そんな馬鹿な!本当は何もわかっていない。
全員が終わって、もう一度音楽教師が、私の実技を褒めてくれた。おかげで私がギターの名手だと勘違いするクラスメイトが何人か現れた。噂とはそういうものだろうか。

夏休み前になって少しずつクラスが出来上がり始めた。
授業中後ろの方がなんとなくざわついた。一番後ろの席の子が椅子ごとバタンと倒れた。大きな音がしてクラス全員がそこへ駆け寄った。
「靴を脱いで頭にのせろ!」「口にタオルを入れろ!」
叫んでいるけれど、誰も動かない。
彼女が口から泡を吹いていた。
保健室に急ぎながら思った。彼女には持病があったのだ。だからまともに登校も出来ない私に共感してくれたのだ。今度は私が彼女を守らなければ。

養護学校に彼女と同じ病気の子が二人いた。彼らに比べると青梅さんの発作はきわめて古典的だ。ただああいう倒れ方をした場合、地面に石や岩があると危険だ。

翌日彼女は元気な姿を見せてやって来た。けれども二度と私には話しかけることも近づくこともなくなってしまった。私が見てしまった事に彼女がこだわっているのだ。
私もあれ以来ギターを弾かなくなった。
ただ、ポロンポロンと作曲していた時にできた、左手の指のギターダコが消えるまでに、その後数年かかった。
・・・・・・・・・・・・・・
BGM:「Johnny Guitar

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