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3月:合格発表

3月中旬なのに大雪だった。道路脇に積み上げられた雪は50?60cm。兄は黙って緊張して歩いている。向こうから逆流して帰ってくるお兄さん達がいる。大半が押し黙って歩いてくる。笑っている人はほとんどいない。中には涙を流している人たちもいる。兄の顔を見る。不安で一杯に違いない。私に一緒に行こうと言った真意はわからない。喜びを見せるつもりなのか、厳しさを知らしめるつもりなのか。
泣いている人を見て兄は足を速めた。駅からなんて遠いのだろう。私のような女の子は一人もいない。校門をくぐって兄はさらに足を速めた。
発表までの長く感じられる日々を兄は「蛇の生殺しだ」と苦しんでいた。国立一期は三日間連続試験だった。うぬぼれてもいけないし、怯えてもいけない。三日間集中していなければならない。楽勝だと言われると、なおさらプレッシャーがあるだろう。
「もしも」があれば、地獄が口を開ける。
二期校は名古屋工大に願書を出していたが、勿論母子家庭だから下宿なんて余裕はない。私立なんて余裕もない。だから一発勝負なのだ。
妹を連れて発表を見に行こうと言うくらいだから自信はあるのだろう。自信はあってもなんの保証にもならない。

私は自分の発表を兄のそれほど、明確にはもう思い出せない。私は勉強をするよりも「心の力で夢を実現する」という実験に賭けていた。337という受験番号が合格掲示板に張り出されるイメージだけをしっかりと練習していた。大学の写真を見て、その中の教室で授業を受けている自分を強くイメージした。ホイラー訓やらマーフィーの法則に類するテクニックである。
合格発表掲示版に近づいたら、337と言う数字が何十倍にも拡大されて飛び出してきたのを憶えている。ひとりでひっそりと見に行ったのを思い出した。2流校でその上、病弱のため授業にもほとんど出ていない。どの教科書もほとんど新品のままだ。誰もまさか、合格するとは思っていない。10月の模擬試験はD判定だったのだから。
私は小、中、高としっかり勉強して合格したのではない。人に話しても誰も本気にしないような方法で合格した。だから3月の入試シーズンになると、いつも思い出すのは、兄と二人で歩いた大雪の大阪の道だけだ。
・・・・・・・・

私が実感の無いままふらふらと家に帰ると、そうだ、あの日玄関に日の丸の旗がはためいていた。
「よくやった」という兄からのメッセージだ。私は兄と同じ大学に滑り込んだのだった。

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