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角栄のブレーン

神戸の文学会でその人に出会った。明日時間を空けてくれないかと言われ、OKした。もう名前も顔も憶えていない。2人で会ったのは一度きりだからだ。
食事をし、キャバレーで踊り、その後会員制クラブに案内された。名前を言い、カードを見せて、ようやくドアが開く。
「秘密クラブみたいね」
なんだか男は緊張していた。
「どうしてこう言う場所に出入り出来るのですか?」
「僕は角栄のブレーンの一人なんだ」
小さな声で男が言う。
「あなたは建築家なんでしょう? どうして政治と?」
男は全く何も答えない。
「君はいつからあの文学会に行ってるんだ?君は本当に何も知らないようだから言うけど、・・・これは秘密だよ。でも、あそこで文学を続けていくなら知っておいた方がいい。あそこの会長のM、何故、あんなに熱心に、慈善事業みたいな文学会を主宰してると思う?あのMはね、以前組合活動をしていたんだ。バリバリの労働運動のリーダーだった。だけど、ある時、仲間全部の名簿を当局に売り渡したんだよ」
「えェ!あの会長にそんな過去があるんですか」
「罪滅ぼしのつもりで文学会を運営してるんだよ。大金を手にして、今のあの広告代理店を起業したんだ」
赤狩りの頃の話なのだろう。それにしては男の年齢が若すぎる。会長Mのために、多くの人の生活や家庭がムチャクチャになったんだろうなと、ぼんやりと考える。
「君は、Mのような人間をどう思う?」
「時代背景がわからないから・・・。ただ、気の毒です」
「誰が?」
「M会長が。もう誰にも相手にされない、信用も何も無い。妻と娘を養って、過去を忘れるために、文学雑誌を発行して。なんだかあの人の暗さが分かりますよ」
「文学なんか止めて、腹をかき切って死ぬべきなんだよ、あのMは」
「あなたはどうしてそんな昔の他人の秘密を知ってるんですか?本人が苦し紛れにあなたにだけ話したのなら、秘密は守ってあげるべきではありませんか」
男は心底私の発言に失望したようだった。もう口を開こうともしない。
「それより、角栄のブレーンって、どんなことをするんですか?そっちの方がずっと興味があります」
なんだか気まずい空気が流れる。
「今から、用事があるから」と男が切り上げようとする。
「一応君に名刺だけ渡しておくよ。僕はもうあの文学会には行かない」

私はBFの俊夫にその話をした。「この住所に2人で行ってみない?普通は聞けない面白い話を自宅でなら話してくれるかもしれない」
地図を見ながら俊夫の運転でその名刺の住所を探すのだが、どんどん山奥に行く。山を切り開いたばかりの土地の上に建売住宅のようなものがズラリと並んでいる。「ここみたいよ」ようやく突き止めた。「○○さんのお宅ですか?○○さんいらっしゃいますか」と俊夫と2人でインターフォンに声を入れた。険しい顔の女が一人出てきた。
「建築家だか角栄のブレーンだか、そんなこと知らないけど、あの男もう何ヶ月も帰ってないし、連絡も無い。こっちが居所教えて欲しいくらいよ。あんたたちは、何時何処で、あの男と会ったの?」

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