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とり残される不安

学校から帰ると珍しく祖母が玄関から飛び出してきた。
「どうしたの?」
「あー、よかった。帰ってきた。」
「帰ってくるって、当たり前なのに、どうしたの?」
「誰も家に帰ってこなかったらどうしようと、不安になって」
「他に行くところがないから、みんな帰ってくるに決まってるのに」
「一人で家にいると、このままひとりで、とり残されたらどうしようと」
私は病弱でほとんど学校に行かない。従って祖母も一人で家に残されることもめったにない。珍しく私が5日も続けて学校に行ったものだから、祖母は次第に不安になってきたのだろう。それにしてもあの時の祖母は本当に不安そうな顔をしていた。

もっと小さい時の夏休み、父と母と兄と私と、祖母を残して4人で母の実家に行って何泊かしたことがあった。あの時祖母は、一人で家に残されて、やはりそのような不安を感じていたのだろうか。
・・・・・

子供が家を建てたりマンションを買ったりして一家で出て行き、団地にひとりとり残される老人が多いと聞く。昔流行したニュータウンの団地は、今や、独居老人の集合住宅と化しているとも聞く。大邸宅に一人とり残された老人も多いだろう。

・・・・・
私の祖母が精神的不安を訴えたのは、あの時が最初で最後だ。昔の老人は生活手段を持たない。同居と言う暗黙のルールを盲信して生きていた。しかし息子に死なれた母の場合、嫁に再婚相手が出来た場合、一般的にはどうなっていたのだろう。息子に死なれた老いた父の場合、嫁に再婚相手が出来た場合、一般的にどうなっていたのだろうか。「世間の非難」という見えざる手があって、こんな場合嫁が再婚する可能性は前提として、摘み取られていたのかも知れない。世間の非難や賞賛の眼が、福祉の役割を果たしていたのかもしれない。

祖母は世俗にまみれることもなく、迎合することもなく、精神的に堕落することもなく、掃き溜めの鶴のようにいつも毅然と生きていた。孤立に耐えられたのは、豊穣な体験と知識に加え、読み書きが完璧に出来たからだろう。

祖母が亡くなった翌年、祖母の部屋の棚の奥に一冊の手帳を見つけた。何年も前の手帳で、パラパラとめくってみたが何も書かれていない。それより未使用のまま古くなってペイジがくっついている。それを剥がしていくとその中の一頁の一行に、読み取れないような弱弱しいかすかな字で、何か文字が書いてある。一冊にたった一行。虫眼鏡が必要なくらいの字で、祖母の字なのだろうか、こう書かれていた。?淋しい生ー

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