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Roseからの手紙

思いがけず昨日の夕方、郵便受けにRoseからの手紙を見つけた。石井好子先生が亡くなられて、もう手紙を書く喜びも受け取る喜びも忘れかけていた。Roseのことは、自分の終焉を考える時いつも思い出していた。
Roseの夫は癌、Rose自身も変形関節症に悩んでいるようだ。
---Je te remercie beaucoup pour ton cadeau et aussi pour ton amitie. Car tous les jours tu es dans mes pensees et j'espere un jour te revoir. Tu reste dans mon coeur pour toujours. Je t'aime Bruxelles, n'oublie jamais ton amie. Je t'embrasse tres fort... R---
こんな手紙を私に届けてくれるのは、もうRoseしかいない。Roseは老いたと書いている。私に会いたいと書いてきている。少なくとも手紙が欲しいと。

30数年前、Roseは大きなカフェを持っていて、その上はホテルになっていた。そして私をそこにただで泊まらせてくれた。お客さんや近所の人たちともみんな友達になって、最高に楽しい日々を、私はRoseと共有している。

ベッドに座っているとRoseが入ってきた。そして横に座る。「Bruxellesは男に興味がないのか?」といきなり聞いてきた。そんな事はない。「Bruxellesはほとんど男性の方に視線を向けない」Roseが私の視線の先をいつも気にしていたことはわかっていた。Roseは自分と感性の合う話し相手をずっと求めていたのだろう。Roseは会った瞬間から私に興味を持ってくれた。Roseも私も姉妹がいない。父を早くなくしている。母親の愛は兄だけに向けられている。私もストレートだが、Roseは自分の感情にもっとストレートだった。その他の環境も性格も、かなり近い。
「Bruxelles,私も同じようにするから、どうか私に対しては、心を手のひらに乗せて、包み隠さず見せて欲しい」
そう言った。「Marcelと再開した時、キスしてたけど、Marcelのこと好きなのか?」?特別好きではないけど、再会の挨拶。「好きと、誤解されるよ。MarcelはBruxllesにもう夢中なんだから。それにMarcelはスーを持っていない。スーを持ってない男と付き合っては駄目」「私は18で子供を産んだ。たった2回しかしてないのに。無知だったのよ。仕方がないから結婚。あっという間に母親で妻。あなたのように自由はない。私もあなたのように、一人でふらりと、異国に行ってみたい」-Rose、日本人って、珍しいの?「そんな事はない。お店でスロットマシーンをする日本人は多い。よく来る。けれど話す気にはなれない。感じるものが全然ないし、しゃべらないもの」・・・
Roseには夫以外に恋人がいた。たしかJacquesといった。他にもRoseに好意を寄せているお客さんも多い。Roseは男の必要性をよく知っている。女であるためには男の愛が必要なのだ。
「でもね、子供ができるのは困る。Bruxellesだから言うけど、ここでは中絶はできない。2年前実は子供が出来て、そのときは迷うことなくアムステルダムに行った。この意味わかる?」-Roseの人生は18歳で、止まってしまった、子供のせいで。そう思ってるのね。Willyのこともっと可愛がってあげなくちゃ。でも18じゃ、いきなりおかあさんになれないかもね。「Bruxelles,明日もあさってもずっとここに泊まってていいよ。いろんな話しようね」

RoseはBruxellesはカウンターの向こうにいるのでなく、私のそば、つまりカウンターの中においでよ、という。何もしなくて座ってるだけでいいから。そしてRose一人が働いている。Roseはお客さんと話すが、私がカウンターのお客さんと話すとイライラする。「Bruxellesは私の友達よ」と睨みを利かせてから、飲み物をテーブルに運ぶ。そうこうしている内に、カウンターに戻ってくるたびに「Bruxelles,私のこと好き?」とあたりをはばからず聞くようになった。大勢の人の前で「好き」など、冗談にも言えない。また飲み物を運んでいく。そして戻ってくる。そのつど、Roseの様子がおかしくなってきた。次第に心理的安定を欠いていったのだ。「Bruxelles,私のこと好き、愛してる?」と何ものかに憑かれたように繰り返す。Roseが近づくたびに、心がバランスを崩すほど、その質問に捕らわれているのがわかった。精神はぐらぐらだ。どうしよう、Roseに愛している、と言ったところで、ここまで不安定になると、最早効果はない。「Bruxellesは私のこと、好きではない。だって、あなたと話をするけど、私には何も言わないもの」カウンターのお客さんに愚痴る。Roseは男に囲まれているけれど、女性の、お母さんの、お姉さんの愛が必要なのかも、あるいは心の通う女友達の愛が。どうしよう。お客さんもRoseの様子が変なのに少し気づいてきた。「Rose,日本人の子、困ってるじゃないか」誰かが言う。「だって、愛してるって言ってくれないもの」近づくとRoseのイライラの波がこちらにも伝わってくる。どうしよう、少し焦った。私はかつて精神科医を志したのだ。分かった。覚悟を決めた。今度カウンターに戻ってきて、また同じ質問をしたら...。
Roseが同じ質問をした。Roseの手が空っぽになるのを確認してから、Roseを振り向かせRoseと向き合い、Roseを両手で抱きしめて、挨拶ではない心を込めた熱烈キスをした。
波が引くように、Roseのイライラが、スーと音もたてずに溶けてなくなって行くのが分かった。別人のように安定したRoseが笑った。カウンターのお客さんたちから拍手が沸き起こった。(日本だと、こうは行かない!)

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