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ラーラーラーシャバダバダ

私の昔の友人のYはいつも男のことを考えているのか、男の話ばかりしていた。作品もかなりエロチックで、エロスの詩人と呼ばれたときは平然としていたが、ポルノ詩人と言われたときは猛然と怒っていた。彼女に限らず、女性とは、彼女のように常に男を意識において生きているものかもしれない。道を歩いていて出会った男にときめく、などという話はよく聞く。いくつになっても恋をしましょうなどという話もよく聞く。だとすると私は、どこかで何かが不足しているのだろうか、滅多にときめかないし、男性を意識もしない。男と女は身体の造りが全然違うものだと、むしろ最近になってようやく気づく始末だ。もちろんときめいたことがないとか、恋愛体験がないとか、不感症とか、そういうわけではない。女友達より男友達の方が多かったから、いちいち意識などしてる暇も、する必要もなかったような気がする。男性に慣れすぎていたのが原因かもしれない。一生のうちで心がときめいたりドキドキしたり、そんな経験は、うーん、数えても10本の指で充分あまりやお釣りがもらえそうだ。ただそんな私が、人生で一度だけ、不可思議な行動をしたことがある。何故そのように動いたのか、自分でもわからない。
梅田のインタープレイ・ハチに一人で夕方に出かけた時だ。暗い階段を下りて店の中を見渡すと、その人はパラパラといる数人のお客の中にいた。右側だ。私は右側の席に座ろうとした。その人をじっと見ていたわけでもない。飲み物を注文して、音に意識を集中しようとする。多分その時私は寂しかったのかもしれない。ぽつんと一人で座っている、その男性の隣に、座りたいと思ったのだ。そんなことはもちろん初めてだ。その男性がタイプだったとか、セクシーだったとか、ハンサムだったとか、それは違う。ただとても「暖かい心の人」に見えたのだ。普段は、心が暖かいとか、優しいとか、そんなことで決して人に魅力を感じたりはしない。知りもしない彼に、一体何を感じたのだろうか?飲み物が運ばれてくる前に、私は席を立ち、その男性の隣に移動した。自分でびっくりである。しいて言えば、家族のような兄弟のような、いきなりの信頼を覚えたのだ。隣に座って、やはりほっとした。これで落ち着けると思った。友達と一緒にいるような安心した気分になった。私も彼も、当然ながら口をきかない。ここはジャズ喫茶なのだ。私はマッチョ好みなのだが、彼は小柄だ。私は、喧嘩してでも守ってくれるような男が好みなのだが、彼は喧嘩も弱そうだし、口論にも向かない、ように見える。顔は川津祐介に似ている。いい人風で気持ちのいい顔だ。私は色白が好きなのだが、この人は色が黒い。それだけ考えると、それ以上彼のことを考えるのはよそうと思った。音楽に意識を集中する。でもなんだか少し楽しい気分になってきた。20分ほどそこにいた。普段はもう少し居るのだが、こんな些細なことで喜んでいる場合ではない、という気がしてきて、さっさと帰ることにした。少し無理をしているなと思ったが、彼の方に視線を向けることもなく、さっさと一人で店を出た。
10mほど歩いたところで「ちょっと、ちょっと」と私を呼び止める声を聞いた。振り向くと彼だった。あんなに内気そうな彼が、私をナンパするの?「よかったら食事でもご一緒にいかがですか」と彼が言った。そして私は多分彼と食事をしたのだと思う。そのへんのことは、もう忘れた。
フェロモンだ。多分好き好きフェロモンを発散していたのかもしれない。内気な彼が階段を駆け上って追いかけてくるなんて、きっと彼は断られない確信を掴んでいたのだろう。住所や電話を交換した。彼は会社に電話をかけてきて、仕事が終わったあとで会うようになった。彼は何歳か年上で、大人だった。彼はキャバレーに私を案内した。「淀」やら「富士」やら「ワールド」やら、もう忘れてしまったが、キタやミナミにたくさんキャバレーがあった。ホステスのお姉さんたちが遊んでくれるので、彼も私も気を遣う必要がなかった。ふたりで京都に行ったこともある。「車はないの?」と聞いたら、学生時代に乗っていたけれど、当たり屋に当たられて、ひどい経験をしたので手放したと言った。きっと大変嫌な経験をしたのだろう。彼の住む中百舌鳥の社宅に行ったこともある。彼の部屋でジャズをきいた。いいレコードもいいステレオも持っていた。あるとき「今日はこれで買い物をしてきてくれないか」といって5000円を私に渡した。「はい」と言って買い物に行きステーキを2枚買ってきた。それを焼いて食べたのだが、美味しかったのだが、彼は私が主婦に向くかどうか、チェックしていたのかもしれない。その頃の彼の給料は8万円だと言っていたから、一回で5千円使い切ると、ペケである。当時、私には生活観がまるでなく、人間生きるのに一日三回食事しなければならない、などということさえ考えたことがなかった。結婚はあの世以上に異次元のことだった。彼と一緒にいるとき彼に電話がかかってきた。長々と話は続き彼が申し訳なさそうに繰り返し断っている。「何の電話?」とあとで聞いたら、親友が自分の妹と彼との結婚を望んでいるので、断ったのだ、といった。タイミング的にあの電話は仕組まれていて、彼は私の気持ちを確かめたかったのだろうと思った。「いいひとだったら、結婚すればいいのに」と言った。彼は真面目で内気だから、私が何を考えているかまるでわからなかったのだろう。「私のために断ってくれたの。嬉しいわ」とか言えば、ベストなのだろうが、そんな大嘘は言えない。もうこの部屋に来るのは最後にしたほうがいいかもしれない。その日は遅くまでいて、タクシーで帰った。それからも会ったのか会わなかったのかよく思い出せない。半年以上経ってから彼から家に電話がかかってきた。「もう僕と会う気はないの?いい人ができたんだね」「急に何を言うの?会わないのはあなたが電話をくれないからよ」「僕見たんだ」「何を見たのよ」「Bちゃんを、あの店で。一緒にいたのは誰?恋人?」「あの店ってハチ?」「いいムードだったよ。もう僕の出る幕じゃないと思って、電話かけられなかったんだ」「誰のこと?そんな人いないわ」「カウンターに並んで座っていて、Bちゃんは、となりのサラリーマン風の男の肩に手を置いてとても親しそうにしていた」「多分あの人ね。全然どーでもいい人よ」「あれを見て、ぼくがどんな気持ちになったか、君は想像がつかないんだね。こうして電話するまで随分時間がかかった」「何が言いたいの?誤解よ、誤解。」「僕自身がこの目で見たんだよ」「カウンターに並んで座っていただけじゃないの」「普通の関係じゃないムードだった」「ちょっと待ってよ。それらしい人の話なら少しは誤解も仕方がないけど、相手があの人じゃ、言いがかりにもならないわ」「じゃ、Bちゃんにはあれくらい親しげに接する男友達が何人もいるってことだね」「サヨナラをいうのなら、はっきり言えばいいのに。自分が被害者の立場に立ちたいのなら、人を攻めたいのなら、もっとマシはストーリーを考えてよ」「全く、君って人は」・・・激しい喧嘩になってしまった。彼は自分の気持ちに決着をつけるために、そのためだけに電話をしてきたのだ。しかしいくらなんでもあのTTを私の恋人と思うなんで、馬鹿馬鹿しすぎるわ。けれど、この喧嘩をきっかけに彼が新しい方向を見つけるつもりなら、それを祝福しよう。そう言えば彼は「Bちゃんは一瞬僕を見たんだよ。そしてすぐに、我が身をその男の影に隠したんだ」と言った。そう思い込んでいるのだ。私はあの店で彼を見た記憶などない。もし私と目があったのなら、ヤーヤーとカウンターにやってきて、肩でも叩いてくれればよかったのに、そうするには彼は内気すぎたのだ。

あれを一目惚れというのだろうか?よくわからない。かれが追いかけてこなかったら、何事も始まらなかった。私が一度座った席を離れて、誰かの隣に座りに行くなんて、あとにも先にも一度きりだ。私が男性に対して何らかのアクションを、起こしたことも、起こそうと思ったことも、この時以外にはない。不可思議な例外的行動という以外にはないのだ。
この日記を書き始めてすでに10年目だ。10年目にして初めてTI氏のことを書いた。私の心の中で彼がどのようなpositionにいるのか、よくわからない。彼はもう定年を迎えているはずだ。故郷の姫路に帰っているのだろうか。中百舌鳥に家でも買って、今頃は孫たちとでも遊んでいるのだろうか。いずれにせよ「あー、あんな女と思い切って別れてよかった」と思えるような人生を歩んでいてくれれば、たとえ誤解がとけなくても、私は充分に満足だ。

・・・・・追記:2013年5月5日・・・・・
久しぶりに今朝とても嫌な夢を見て、不愉快すぎで目が覚めた。そして昨夜書いた私自身の不可解な行動の意味がサーっとわかった。そのとき私は寂しかったのだ。心の中で悲鳴をあげていたのかもしれない。「暗い階段を下りて店の中を見渡すと、その人はパラパラといる数人のお客の中にいた。右側だ。私は右側の席に座ろうとした。」私は彼に兄を求めたのだ。「しいて言えば、家族のような兄弟のような、いきなりの信頼を覚えたのだ。隣に座って、やはりほっとした。これで落ち着けると思った。」極端な孤独の底で、私は言葉にできないほど強く、あの時彼の中に「兄」や「家族」を見つけ出したのだと思う。

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