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病弱という井戸の中で

病弱という井戸の中で 2004年6月18日 (Fri) 15:13:10

養護学校にいる時、夕食後いつも海を見ていた。夜の海は波音と潮の匂いと気配として存在するだけで真っ暗な闇そのものになり視覚的には消えて見えない。そんな海を飽きもせずに見た。一度母が亡き父の元上司と二人で面会に来たとき、私が居ないということで大騒ぎになった。「どこで何をしていたのか」と聞かれ「ベランダから海を見ていた」と答えた。「海といったって、こんな時間に、何が見えるの?」と、問い詰められた。・・帰省日に祖母が「Bちゃん、夜の海見ていたんだってね。その話を聞いて胸が締め付けられた」と言った。「何で?」「家に帰りたいの?」「別に」・・その時はまだ体調がよかった。それから何ヶ月かして発作が止まらなくなった。苦しくて仕方がない。皆が夏校庭でキャンプファイヤーをしてフォークダンスを踊っているのを、二階の静養室の廊下から見た。持っているトランジスターラジオから「ライオンは寝ている」が流れていた。
小学校5年生の南君の発作は私よりも数段きつい。さっきから「苦しいー」と叫んでいる。座って前後に揺れていたが、あまり苦しいのか、ベッドの柵を越えて、床にドターンと落ちた。びっくりして見ていると、そのまま両手足を使って這って、静養室を出た。廊下を渡って医務室にいく。ドアは南君が体当たりすると簡単に開いた。それから”薬”の入っている医薬品のケイスのガラス戸を、素手でガチャンと叩き割った。彼は血まみれの手で薬をつかんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このままずっと発作が止まらなかったら、ここに居ても意味がない。寮母のF先生はいつも言っている。「こんなところに長く居ると高校進学もできない。世間から取り残されてしまう」・・どうやら世間では中学生と言うのは勉強しているらしい。私には関係ない。私はただ少しでも楽に呼吸がしたい。どうせ死ぬなら薬を使って楽に死にたい。
次の帰省日、帰ったまま、もう、戻らなかった。

一般の中学校に戻ってからも体調は最悪だった。が薬を使って時には学校に行けた。復帰一回目のテストは500人中380番程度。二度目のテストはいきなり27番。三度目の実力テストはどうしたことか学年で2番になって自分で吃驚した。真っ先に祖母に伝えた。祖母はまた悲しそうな顔をした。「Bチャン、情けない子やね。何で一番になられへんの?」「・・・!!」祖母は続けた。
「比べると言う行為は意味がない。一流校の一番なら価値はあるけど、二流校の二番なんて、喜ぶだけで視野の狭さを立証しているに過ぎない。井の中の蛙大海を知らず、にだけはなってほしくない。玉磨かざれば光なし。もっと磨いて磨いて・・磨くことに専心しないと、本当の自分は見えてこない。喜んだり悲しんだりするのは、その後でいい。価値観は人によって、地域によって、国によって、時代によって違う。価値判断基準そのものを、自分で作り上げていってほしい。受験屋が決めた点数や席次などと言う価値基準、よく考えてごらんBチャン,おへそが茶沸かす代物。出題自体の出来不出来もある。Bチャンは隔世遺伝でおじいちゃんの病気を貰った。とにかくその病気に打ち勝ってほしい。学校や進学と言う枠にはまって人生を考える必要は全くない。健康じゃないと。何より健康。すべてはそれから」・・

この祖母は私に一体何を望んでいるのだろう?健康!!努力によって得られるものなのか。磨けば健康になるのだろうか?意思でどうにか出来るものなのだろうか?

私よりも三年長くいた直ちゃんは養護学校の中等部を卒業した。その時同窓会の名簿を作り、バスをチャーターして吉野山へ桜見物の同窓会を開いた。記念文集「まつぼっくり」も作った。その中に南君、悦ちゃん、木内君、荻野君、植田君たちが,私と同じ病気で衰弱しきって,この世を去っていく最後の日の状況が、取材され細かくレポートされていた。体力を使い果たし、精も根も尽き果てて、呼吸する力そのものを失くして、一人一人、無念の井戸に沈んでいった。
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REGINE「Pourquoi un pyjama」 Serge Gainsbourg 作
シャンソンのこの突き抜けぶりが好き!


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