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(5)船会社のイヴ・モンタン

(5)船会社のイヴ・モンタン 2004年7月13日 (Tue) 16:16:37

近鉄百貨店で見たBさんとCさんのマネをしてMSと画廊の二階で、誰も見ていない時に、手を取り背中を合わせて少し踊ってみた。
彼は身長180cm近くあり、ルックスはイヴ・モンタンの若き日に似ている。来年早々ロンドンに発つ。1週間かけて少しづつ生い立ちや、夢や希望を話してくれたのは、会ってまだ2週間目くらいのことだった。

東京から帰ってきて淀屋橋の東京海上ビルの9階に、親友の姫神さんを訪ねた。
「姫神さん、あの人だれ?」
「やっぱりね。Bruxellesちゃん,好みでしょう」
MSは遠くのほうで靴の紐を直していた。その仕草がとても美しい。勿論顔は見えない。
「実はね、あの人が、貿易会社の人に頼まれて、人を探しているのよ。一度話しを聞いてみない?ちょうどタイミングがいいわ」
「紹介してくれるの?」

次の日、MSに連れられて初めて大江ビルに入った。1階の喫茶店で中村さんと面接する。
「いい会社に行ってたのにどうしてやめたんですか」
「制服着せられるのがイヤだったんです」
前の会社は大会社の子会社で昔からよく知っている亡き父の元上司が社長をしていた。形式上選抜試験はあったが、とっくに内定していた。東京に本社があり、新しく大阪に営業所を出すために人材を集めていた。事務用品の購入から、銀行口座の開設、とにかくイロハのイからのスタートだった。昼食は大会社の食堂でする。営業所は大会社の前の古いビルの1階で、やはり子会社で医学専門書を出版している(株)西日本臨床の部屋の一角を、仕切って間借りしていた。営業所所長が本社から一人来て、他に引き抜いた営業マンの新人と私の、3人構成の会社だった。社員食堂の食事はおいしく、しかもタダだったが、大のエリートの大人が食券を持って,並ぶという行為にまずショックを受けた。

中村さんは、前の会社では決して見かけない、ビジネスマンというより、浪速商人という感じがした。
タバコを出す。透かさずMSがマッチをする。中村さんは何を焦ったのか、なかなかタバコを口に持っていけない。MSはじっと待っている。火に近づこうとしてはタバコを落とす。MSの指が焼けてしまう。MSは動じない。平然と待っている。火が指の皮に燃え移る直前になって、ようやく一息で消した。やり直し。また同じ。中村さんがもたもたして、ああ、MSの指が燃えてしまう。ギリギリのところで火がついた。アッチッチ。そう感じたのは見ている私で、MSは平然としていた。

MSや姫神さんの会社は、ユダヤ系の船会社で、MSは営業マンとして中村さんと以前から顔見知りだ。即決。給料も1.6倍。前の会社は道修町で淀屋橋の南側。今度は一番北側で降りる。いずれにせよ商都大阪の中心地だ。地下鉄を上がるとまず角に、父の代まで唯一の親戚として残った石原のビルが見える。土佐堀川を西に2,3百メートル行った、今の住友本社ビルの辺りが、本籍地の筈。大江橋から振り返ってみる御堂筋が私の一番好きな大阪。外国にいても思い出す故郷は、自分の家でも自分の部屋でもなく、いつも御堂筋だった。祖母にそうインプットされてしまっている。

MSは初めてアルファベットを見たときからアルファベットに恋した男。高校のときリンガフォンを買って欲しいとねだり,拒否されたことが悲しい思い出として心に残っている、ピュアーな少年。親の反対を押し切り、山口県から京都に単身上洛。働きながら2部で学び京都外大を卒業。身のこなしが美しいのは、生活時間の大半を、ホテルマンとして働き,世界のVIPや一流芸能人と接して、自然に身につけたものに違いない。

「今の仕事は、今までやりたいと思っていた仕事に近い。でも、もっと語学をやりたいんだ」日当たりの悪いボロアパートに住んで留学用にお金を貯めていた。壁という壁には様々なスピーチコンテストの表彰状が掛かっている。
「タイプも、ほら、自分で覚えたんだぜ」練習用紙が30cm程の厚さになっている。
「故郷を捨てた。親を捨てた。俺にはもう後がない。突き進むしかない」
スカラシップ留学生や親掛りの私費留学生しか見てこなかったので、彼のこの決意の構成過程に最初のうちは少し戸惑った。
どんな女と、どんな恋をしてきたのだろう。その中に、エディット・ピアフは、いなかったのだろうか?

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「Les Momes de la Cloche」  Edith PIAF

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